2009年8月17日月曜日

十王院前坂の【てん転ばし】

八戸不思議散策の記念すべき第一弾として、
十王院前の坂道に出没するという「テンコロバシ」にターゲットを絞った!
ナゼなら、
自宅から近いからだ。

そんなこんなで湊町の十王院。


ここ十王院には、
湊町出身の僧、津要玄梁(しんようげんりょう1680〜1745)作の地蔵菩薩像(市文化財指定)が安置されている。
玄梁は石仏彫刻をはじめ絵画や詩文、和歌などに長けた“芸術家肌”の僧だったらしく、この地蔵菩薩像の内部にも玄梁自身の墨書が収められている、らしい。
また津要玄梁は階上の寺下観音住職として、五重塔や灯明堂を建てたことでも有名である、らしい。

で、
テンコロバシは、そんな由緒ある十王院前の坂道を発光しながら上下に転がっているという妖怪なのである。
発現は主に雨模様の夜に集中するという。

“十王院前の坂道”というと、陸奥湊駅前通りからグレットタワーへ向かう坂道を思い浮かべてしまいがちなのだけれど、おそらくは(十王院墓地を抜けて)もう1本十王院側に入った、昼でも薄暗い急な路地坂の方が出現場所だと推測される。
ナゼなら、
車道で不用意に転がっていたとしたら…
クルマに轢かれるのがオチだからだ。


テンコロバシの調査なのに真夏の晴天真っ昼間に来ています。
ナゼなら、
テンコロバシが出そうな雨の夜にこんな所に1人で来たら…
何にも無くても確実に怖いに決まってるからだ。

あぁいいともさ、
チキン野郎とでも何とでも呼ぶがいいさ!


さて、
このテンコロバシがナゼに坂道を上り下りしているのかというと、どうやら通りかかったニンゲンの脚を引っかけて転ばすのが目的らしい。
だから「てん転ばし」。
しかし、転ばしたからといってソレ以上にどーこーするワケでもなく、
転んだらよし。
ソレ以上でもソレ以下でもない。
ただたんに他人を転ばしたいだけなのだ。
(ニンゲンにもこーゆー性悪なヤツは多々いる)

こーいった無意味な、あるいは意味不明な妖怪というヤツは日本中に数多く“棲息”しており、実は意味不明な妖怪の方が多いといってもいいくらいなのだ。
例えば、
寝ているヒトの枕をひっくり返す、だけ、の「反枕」(まくらかえし)
風呂の垢を舐める、だけ、の「垢嘗」(あかなめ)
小豆を洗っている、だけ、の「小豆洗い」(小豆とぎ)
…などがメジャーどころであろう。
(実は、ソレゾレに突っ込んで考察すると個々に恐ろしい妖怪なのだが、恐ろしいのは怖いのでここではオモシロ妖怪キャラとして扱っておく)

テンコロバシと同じで「転ばしてナンボ」の転ばし系妖怪は各地にイロイロ棲息しているようだ。

岡山県邑久郡には「てんころばし」という同名の妖怪がいるらしい。
岡山のテンコロバシは「テンコロ転ばし」とも呼ばれ、古来「砧」や「槌」をテンコロと呼んでいたことから、いにしえより伝わる「野槌」(野つ霊:野の精霊)に発祥しているものとも考えられている。
したがって、その姿は「槌」に似たモノであるらしい。

また福島県や山口県などにも「鑵子転ばし」(カンスコロバシ)という妖怪がいて、テンコロバシ同様のコロバシ属と思われる。
しかし「鑵子転ばし」は自分で自ら転がって来る実務タイプではなく、身を隠したまま鑵子や酒器・茶器などの“道具”を山中の崖の上から転がしてよこすという甚だコスい妖怪である。
同じ転ばし系であっても八戸や岡山のテンコロバシと若干スタイルを異にするようだ。

また、鳥取県に棲息する「ツチコロビ」や高知県の「タテクリカエシ」なども同属とされている。

なんにしても、ヒトを転ばして喜んでる迷惑な愉快犯的妖怪なのである。

でもチョット憎めない…というのが妖怪の“魅力”なのかもしれない。




で、この十王院前坂道、
御覧の通り、自転車ではキツイくらいの勾配と自動車も通れないくらい細い路地である。
コレが未舗装無街灯だった時代であれば…
雨で足場も悪く、夜は見通しもきかなかっただろう。
要するに、普通でも油断してると転びかねない坂道なのだ。

また、土葬された“人”から発生したリンが雨水と反応して発光する現象こそがヒトダマの正体だとする説が有力とされている。
であるならば、この十王院の墓地に面した急な坂道に発光する“物体”があったとしても、なんら不思議とするところではないだろう。

あるいは、漁火や船の航行を助ける沿岸の松明などが雨で乱反射し、十王院あたりまで届いたとも考えられなくもない。

と、いうワケで、
テンコロバシは、どーゆー形態にしろ「実在する」あるいは「実在した」という結論に達した。

テンコロバシ、います。

実際、夏休み浮かれした自転車中学生がこの坂で転んでました。

あ〜こわい。


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