さて、鮫浦の漁民をことごとく“財”に導いた八戸太郎は、
実のところホントに「神」だったのか?
純粋で良きヒトも邪悪な潜在的罪人もいる漁村全体を潤す行為は
はたして神の所業と言えるのか?
語られる八戸太郎物語の中で、まず冷静に注意深く読み解きたい一説は、
「太郎が現れると鰯の大漁が続く」というくだりである。
太郎が来たから、あるいは太郎が呼び寄せたから、鰯が増えたのか?
いや、鰯が沢山いる場所に太郎が捕食しに来ていただけなのではないか?
そこで八戸不思議捜査官は、
八戸に縁のあった鯨はいったいどーゆー鯨でどーゆー生態だったのか?
恵比寿浜を訪れていた鯨を特定するために八戸市立博物館に飛んだ!!
民俗展示室漁業ブースに展示されるクジラ絵を見てみよう。


左側がシロナガスクジラで右側がマッコウクジラだと思われる。
そして、さらに西宮神社の八戸太郎像に当てはめてみよう。
頭部の形状からマッコウクジラかソレに類するモノだと推測出来る。
マッコウクジラは有歯動物では世界最大であり、
史上最大の肉食動物とされている。
本能的に巨大なモノを恐れ敬うニンゲンが“神”と崇めるには十分な存在感なのだ。
しかし、
もしも本当に太郎がマッコウクジラだったとしたら…
鰯なんか食べないのだ。
マッコウクジラはイカが好物である。
食事の実に95%がイカ類とされている。
しかもダイオウイカまで食べる程“大物喰い”なのだ。
子供の頃に図鑑等で「クジラと巨大イカの戦い」を見た記憶がないだろうか? その図こそがマッコウクジラでありダイオウイカなのである。
マッコウクジラはチマチマ鰯を食べて満足してるタマではないのだ。
たまに食べる魚だって大きめなヤツがお好みなのである。
そのイカ大好きっ子のマッコウクジラがイカの水揚げ日本一となった八戸の海に毎年来ていたという伝説は、なかなか因縁深い。

↑八戸が誇るイカ釣り船の勇姿!
ちなみに、
イカは回遊魚介で、冬に九州近辺で産まれたイカが
夏に北上し秋に南下する習性から
北上するイカ群れを夏に漁し、
南下するイカ群れを秋に漁する八戸沖合いイカは
長い旅で鍛えられたイカ身としてマッタクもって旨いのである。
水揚げ日本一だけではなく、味も超逸品なのだ。
量、質、共に日本一!
いかグレート八戸!
太郎が毎年、鮫浦を訪れていたのは、そんなイカの旬である夏だった。
あながち偶然や根も葉もない作り話とも思えないのではないだろうか?
太郎が大好きなイカや太郎好みする大きな魚は、小魚を好んで食べる。
小魚といえば、鰯!(言い切り?!)
鰯は古くから八戸の漁業を支えてきた“主力産品”であり、
八戸産シメカス(鰯由来の肥料)は全国的に流通する程の高品質で、八戸は鰯超産地として名を馳せたのだった。
八戸太郎(鯨)と鮫浦と鰯。
どーやら『鯨ー鮫ー鰯』の魚偏トライアングルが朧気に見えてきたようだ。
ここまでくるとナンダカンダで
「太郎って普通にマッコウクジラなんじゃねぇ?」っぽいけれど…
しかし実は、どーもマッコウクジラと特定できない要素も残されている。
マッコウクジラならば小型の♀でも優に10mを越すのだが、
鯨石の大きさからすると、どー見ても小柄なミンククジラかスナメリやイルカの類なのである。
ちなみにミンククジラはコイワシクジラ(小鰯鯨)とも呼ばれている。
2008年宮城県沖の調査資料によると、
ニタリクジラ(髭クジラ)の確認数がもっとも多い。
このニタリクジラはイワシクジラの近種で
分離されるまでは、イワシクジラと同一視されていた。
主食はイカナゴ(メロウド)で、当然イワシなどの小魚全般も食べる。
またイワシクジラはカツオクジラとも呼ばれるように
よくカツオが付くクジラでもあるのだ。
カツオは、天敵(カジキマグロなど)から身を守るためにクジラに寄り添い、クジラは、小魚群を追うカツオのオコボレを頂くという共棲関係を維持しながら、夏にかけて三陸沖を北上するのである。
イワシの群れとカツオとクジラがグループで移動しているワケだから、デカくて見つけやすいクジラを追えば大抵イワシ類にありつけるという寸法だ。
要するに、八戸太郎は漁民達のごく平凡な“暮らしの知恵”みたいなものだったとも考えられるのである。

また、当時の漁民が毎年現れるクジラの個体差を正確に判別特定できたのかどーかも疑わしいところだ。
我々八戸不思議捜査官及び分析官が八戸太郎の科属種を特定できるかどーかも疑わしいところだ。…と言うかホトンド無理だ。
また、巨大なクジラが石化するほど体積を高めつつ縮小した場合、
そのサイズが何%までダウンするのか……
我々の頭脳では、まったくもってサッパリ甚だ全然とんとワカリマセン????
柄にも無くアレコレ思考を巡らしていたら、
頭蓋の中のコモドール64が案の定処理能力不足に陥りオーヴァーヒートして、耳からイヤな煙が立ちのぼってまいりました……
限界です。
…と言うワケで、
ワカラナイ事は知らないフリをして、
いよいよ次回は八戸太郎の物語を読み解く!…予定。
言い伝えられた伝承の中にこそ、
「現実」と「迷信」を繋ぐミッシングリンクが隠されている…かもしれなくもない。
またまた、まて次回!
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